トラ技SPECIAL掲載のHPA(その2:1.5V電池2本で超エコ&素晴らしい音)

前回の記事に続き、トラ技SPECIAL 2017Sumer No.139 に掲載のヘッドホンアンプの2例目を作ってみたので、LTspiceと製作したものの計測結果を載せます。

例によって回路の姿は載せますが、部品定数をブラインドしますので、作ってみようと思われる方は本を参照してください。

このHPAもフル・ディスクリートです。記事は第4章 強力ドライブ!ポータブル・ヘッドホン・アンプ(小川敦 氏) です。

私がとても興味が沸いたのは、拙作HPAシリーズが初期のころに作っていた、1.5V電池2本で動くということです。このアンプも1.5V電池2本で動き、実用的には0.9Vになっても動作するという点です。

【LTSpiceに載せた回路図】
HPA_discrete_2.jpg

この回路をマクロに見てみると、カレントミラー負荷の差動増幅の出力を上下対称のカレントミラータイプの終段増幅回路で増幅すると見て取れる。この差動増幅と終段増幅の間にレール・ツー・レール出力段を設けた構成とあります。

回路構成の機微に関しては記事本文を参照願いたいが、上下対称増幅回路+レール・ツー・レール出力段の組み合わせが1.5V電池2個の低電圧でも素晴らしい性能になっているようです。

記事にもLTSpiceシミュレーション結果がTHD 0.02% とありますが、上図で私が行ったのシミュレーションでも、THD 0.024%(入力0.4Vp-p、出力 0.93Vrms at 36Ω)となり、24mWの十分な出力があります。

HPA_discrete_1_2.jpg  

この図は0.4Vp-p入力を行って波形を表示させたものです。黄緑の波形が出力で±1.3Vp-p程度あり、赤の線が1.5V電池から流れる電流波形で、ピークは38mAありますが、平均では何と2.7mA程度しか無く、相当な省エネHPAであることが示されます。記事でも2.7mAとあったので半信半疑でシミュレーションしたものです。アイドル電流を流さない回路なので省エネなのですね。

それでは早速作ってみました。
【基板図・eagle】
HPA_discrete_3.jpg
トランジスタを32個も使うので、100x75mmの eagle std サイズ基板を使うことにしました。スペースに余裕があるので入出力ジャックや2連ボリュームも付けます。
トランジスタのペア特性選定方法について、元記事にも説明がありますが、私はhFEで選定しました。使用したトランジスタ 2SA1015GR も 2SC1815GR もhFEが260~280のロットからhFEを計測して並べます。差動増幅のペア特性が重要な部分は最大偏差5以内のものを使いました。その他は±5以内にしました。

【試作品】
HPA_discrete_6.jpg

手持ちの抵抗を使ったので、炭素、金皮、サイズがバラバラです。
入力にコンデンサが入っていますが、多分不要でしょう。

単三アルカリ電池を2個付けました。電流を計測したいので40mΩ±1%のチップ抵抗を電源線内に挿入しています(赤〇部

1kHzサイン波を入力してチップ抵抗電位差を計測しました。私のテスターでやっと計測できる 0.1mV でした。電流に換算すると 2.5mA です。シミュレーション結果を再現しています。
消費電流が2.7mAということは、市販アルカリ電池で700時間とか1000時間の電池ライフになります。これはすごいです。

参考までに出力端子のオフセット電圧は、左0.0mV、右-0.2mV でたいへん良好でした。

【歪率】
HPA_discrete_4.jpg

波形の繋がりが、ややギクシャクしてますが(これは歪率計測のWaveSpectra が示す THD の値がバラツクので、その読み取りバラツキも入っているものです)、最小歪率は 0.023% at 1Vrms です。シミュレーション結果の 0.024% at 0.93Vrms とほぼ同等の結果を示しました。これは素晴らしいことです。

【周波数特性】

HPA_discrete_5.jpg

いやいや、これも素晴らしい結果です。何と、5Hz~100kHz 間が全くのフラットです。
(500kHzが少し上がっているのは位相補償コンデンサが330pに対して部品入手の都合で390pになっているせいかもしれません)


素晴らしい結果ですが、エージングのために一晩放置しました(こんな低電流でエージングなるのかな?サイン信号入れておけば良いのかな?とりあえず無信号です)
電池電圧は、1.559V が一晩経って 1.543V でした。

【出音】

エージングが進んだのか判然としませんが、その1:スーパーエミッタ に比較して、元気で活性の高い音色というのが第一の感想です。

何か気持ちが良い音がします。
ビブラフォンとベースが混在した楽曲は、綺麗に響くビブラフォンを中心に、かなり低域まで引っ張るベースが支えるワクワク感と広がり感があります。
女性ボーカルでは、歌う姿が目の前にあるような錯覚があります。
フル・オーケストラの様々な楽器が広がって定位している感覚があります。

多分ですが、ぺるけさんのFET差動HPAの歪カーブにあるように、出力レベルが上がってくると歪レベルが下がる傾向に似ています。もしかするとこのカーブが影響しているかもです。

尚、入力カップリングコンデンサの影響を排除するため直結してみてもこの音色感は不変でした。

いや、これは久々の大ヒットHPA と言えるでしょう。
是非、作ってみることをお勧めします。

HPA_discrete_7.jpg

あまりにも素晴らしい音なので、しばらくは使ってみたい。とりあえず簡単な透明プラスチックケースに入れました。電池は残念ながらケース内には収まりません。電源スイッチやLEDも付いてませんが・・・


------------- 2017/08/13 追記 -------------------
【基板をデザインしてみました】

「是非作ってみては」とは言ったものの、32個ものトランジスタをユニバーサル基板で配線するには相当の根性が要ります。自分でもそれを思うと挫けてしまいますね。

と思って、EAGLEで基板レイアウトをしてみました。

いつも使っているプラスチックケース・タカチ GHA7-2-9では、とても無理のようです。厚みは同じで単三電池2個のスペースも同じですが、基板の奥行きが20mmも長くなるケースがあります(GHA7-2-11)。ケースサイズの奥行きが9cm から 11cm に増えますが、ポータブル可能なサイズと思います。

HPA_discrete_8.jpg

手前が入出力と電源系です。電源と言っても、電池2本の接続端子と電源コンデンサ、そしてON-OFFスイッチと電源LEDがあるだけです。Li-ion電池を使うとすると、保護や充電ICが場所を取るので、乾電池2本というのはGoodです。

参考までに、電源コンデンサを付けなくとも、電池だけでかなりの性能が出ます。このブログの試作器には付いていません。

今回の配置では、できるだけチップ抵抗を使わず、音に影響がないところは1/6W炭素抵抗、入力や負帰還抵抗、Zebelフィルタ抵抗には1/4W金属皮膜抵抗が使えるようにしました。(なけなしの利休抵抗使おうかと・・・)
これならば簡単に半田付けができるので、「自分で作った感」が出るのでは思います。

良く見ると、今までは必ずあった可変抵抗器がありません。A級動作のHPAではアイドル電流調整のため必須の部品でしたが、このHPAには必要ありません。ペアトランジスタのhFE選別をしっかりやれば、再現性の良いHPAができると思います。

意外に場所を取るのがZobelフィルターのコンデンサーです。少し幅の広いものが付けられるスペースを確保しました。






トラ技SPECIAL掲載のHPA(その1)

トランジスタ技術SPECIAL誌 2017 Summer(No.139) 版に、面白そうなヘッドホンアンプの記事が掲載されています。

いずれもディスクリート構成なので、本誌のメインテーマ 「トランジスタ回路の読み解き方&組合せ方入門」の勉強には最適の例題になっています。CQ出版社で販売していますので是非お読みになってください。

私なりに遊んでみた結果を中心に記載します。回路も掲載しますがその定数はブラインドします。

その1は、「無帰還でひずみ0.003%以下!フルディスクリート・ヘッドホン・アンプ」(加藤大 氏)です。無帰還、0.003%に惹かれ、シミュレーション、ユニバーサル基板で製作、歪率の計測、基板設計までやってしまいました。

【回路】
記事を書くのに回路図が無くては説明ができないので、本誌掲載の回路でLTSpiceの検証を行った回路図を掲載します。但し、抵抗定数はブラインドしています。元記事を参照願います。

HPA_mukikan_1.jpg

この回路の最大の特徴は、Q5、Q12のトランジスタとQ4の定電流を組み合わせた「スーパー・エミッタ・フォロア」という回路の部分です。記事によればこの回路の素は、MOSトランジスタの回路技術にあるスーパー・ソース・フォロアをMOSをバイポーラ・トランジスタに置き換えたものと言うことです。詳細(その仕組みと性能)は元記事を参照ください。

その基本回路に対し、定電流回路の追加、インバーテッド・ダーリントンTrの追加、更にこれらを上下に完全対称とした回路が上図となる との説明です。

これらの回路を構成するトランジスタの総数は、左右チャンネル合計で 何と!26個にもなります(12+12+定電流2)

LTSpiceでのシミュレーション、試作を行うに当たり、記事掲載の回路を一部変更しています。回路左は定電流回路ですが、元記事ではここに300μAのCRDを入れていますが、CRDは過去にノイズがあった記憶があり、今回はJFET(Idss0.95mA)と抵抗の組み合わせで300μA流れるようにしています。尚、この定電流回路は左ch、右chに共用できます。

Q12,Q13 及び Q2,Q7 は安定した定電流特性を得るため熱接合させる必要があります。

【シミュレーションの歪率計算結果】
LTSPiceの計算結果は素晴らしいものです。最大入力1Vp-pで出力1Vp-pです(バッファアンプです)。最大歪量は入力レベルで大きく変動しません。入力1Vp-pで歪率は何と! 0.00048%でした


備忘録2件:

1.
使用しているトランジスタは、一般的で私も多数所有している 2SC1815、2SA1015 にしましたが、元記事では 2N3904、2N3906 が使用されています。前者は東芝オリジナルですが、最近は東芝製は入手が難しくなって来たようで、セカンドソース品が売られています。但し、留意すべき点は2SC1815 と、2N3904 ではピン・アサインが異なります

2.
私は 2SC1815、2SA1015 でシミュレーションしましたが、当初使っていたモデルでは猛烈な発振が起こりました。成すべきなく、トラ技のモデルを使ったところピタリと発振が止まりました。

(発振あり)
.model Q2SC1815 NPN(Is=2.04f Bf=160 Br=3.377 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=6 Ne=1.5 Ise=0 Ikf=20m Xtb=1.5 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=1 Cjc=1p Mjc=.3333 Vjc=.75 Fc=.5 Cje=25p Mje=.
(発振無し)
.MODEL QC1815 NPN  (IS=4E-14 BF=170 BR=3.6   VA=100 IK=0.25 RB=50 RC=0.76 CJC=4.8p CJE=12p TF=0.63n TR=25n)

私のスキルではどこが問題なのか判りません。実際に試作してみると、(発振無し)を使っても良いようです。

【試作】
トラ技の記事にもユニバーサル基板で組んだ写真が掲載されていますが、ここでは配置と配線図を記載します。
PasS というツールで構成した基板図の画像です。

HPA_mukikan_9.jpg
赤い線は部品面の配線、青い線はハンダ面の配線です。
注意:これはトランジスタに2SC1815、2SA1015 を使った場合の配線図です。2N3904、2N3906 ではベースとコレクタ位置が入れ替わっています。

HPA_mukikan_4.jpg

ユニバーサル基板に設置した回路です。

【音出し1】
やはり、何といっても一番先にやってみたいのは、その音出しです。
リチウムイオン電池2個を使って音出ししました。

HPA_mukikan_3.jpg

エージングもしてない初期の音ですが、何かとても素直な音感です。素直と言うと低音も高音も出ないような響きですが、そうではありません。低音、高音をチェックすべき楽曲でテストしてみましたが、いずれもパフォーマンス豊かで綺麗な発音です。

この音に惚れました。早速ケースに実装してみます。

HPA_mukikan_5.jpg

いつも使っているケースに実装してみました。この薄さですのでリチウムイオン電池は内部に入れられません。
入出力端子やボリューム、そして充電回路やリチウム電池保護回路はV6-2の基板を切り出して流用しました(実はこの改造が大変でした)

HPA_mukikan_6.jpg

充電LEDの点灯もOKです。充電中は高輝度に点灯します。

HPA_mukikan_7.jpg

充電が終了すると減灯します。問題の改善ができました。
標準電圧LED(1.8-2.0V)が適切で、高輝度LEDは充電ICと特性が合いません。

【音出し2】
充放電テストを兼ねて1昼夜近くエージングした音出しテストをしました。

HPA_mukikan_10.jpg

エージングと共に明瞭度が増しました。これはエージングで経験する最大の変化です。
全体的な音の感じは落ち着きがあります。長時間聴いていても疲れない感じです。
しかしながら、低音や高音の伸びにも不足感は全くありません。

【実測歪率】
アンバランス出力ならば WaveSpectra を用いて歪率の計測ができます。

HPA_mukikan_11.jpg

シミュレーションしたのは1Vp-p入力まででした。
ここでは1.1Vp-pまでテストしました。最大出力は0.8Vrms(18mW at 36Ω)です。
最低歪率は 0.04% 程度を示していますが、私の歪率計測システムのノイズ系が0.03%程度あるのでかなりの低歪であるのは納得できます。

【周波数特性】
HPA_mukikan_12.jpg

0dB領域が、20Hz~40KHzです。-3dB範囲ならば、5Hz~108kHz範囲と良好な特性を示します。


【基板の検討】
出音の素晴らしさに感動して、いつものケースに実装できるか、基板の成立性を検討してみました。

HPA_mukikan_8.jpg

先に採用を考えている角型Li-ion電池 850mAh (50x34x5t)では部品エリアが狭く、少しサイズの小さい 650mAh (40x30x5t) にすれば基板上下で4mmのエリアが増えるので、それで設計が成立しました。
Li-ion電池使用を前提にしているので、供給電圧は±4Vです。 Li-ion電池は内部抵抗が低いので瞬発的な電力供給ができます。よって作例と同じように電源コンデンサを排除しています。



金田式もどきDCヘッドホンアンプ・リニューアル(その2:基板デザイン)

どのケースに入れようかと様々に悩みましたが、それらにはそれぞれ一長一短があり、結局のところ今までと同じタカチ・GHA7-2-9Dシリーズを使うことにしました。

【回路図・一部分】
先のブログで述べた、初段定電流回路をカレントミラーにする回路は、このアルミケース・バージョンで既に採用しているので実績があります。
このアルミケース・バージョンでは、「金田式回路に」対して
・2段目差動出力の負荷抵抗を削除して、「インバーテッド・ダーリン接続の変形」回路にしていた
(言い訳になりますが、インバーテッド・ダーリントン変形回路の方が、14%ほど高出力)
・終段増幅前のドライバー段を割愛していた。

即ち、金田式もどき回路から遠く離れてしまっていました。歪率のLTSpiceシミュレーションや実測特性では良好だったのですが、「音色」となると変わっていた可能性があります

そこで、「オリジナルの金田式DCヘッドホンアンプ回路に近づける」 (定電流はカレントミラーに変更する)
となると、こちらで大ヒットした回路カレントミラー定電流ロングライフLi-ion電池となります。

HPA_kane_DC_New_Bat_10.jpg

【基板図1】
今回も赤い基板で作ってみようと思います。

HPA_kane_DC_New_Bat_8.jpg

これまで電池ケースにLi-ion電池を収納していた部分へ基板を延長し、この部分に下側にLi-ion電池保護ICと充電IC回路を付けます。上側のフラットスペースに5mm厚さの角型Li-ion電池を重ねて2個貼り付けます。
左側に8mm程のスペースがあるので、そこに microUSB 充電端子、充電LED、Li-ion電池接続端子を設けました。

HPA_kane_DC_New_Bat_9.jpg

基板のパターン図です。かなり複雑です。

GNDラインを真ん中に通せばすっきりするのですが、動作時と充電時に左下スイッチがGNDラインとの切り替えを介するのと、中央を通すための障害物が多いので、左側を通して電池端子とスイッチを接続しています。

電源ラインや音響出力パワーラインは0.8mm若しくは1.0mm幅にして十分な瞬時電流に耐えるようにしています。

【回路定数の検討】
2段目差動増幅からドライバー段への接続を、インバーテッド・ダーリントンの変形回路を止めて、負荷抵抗方式にしたので、差動増幅へ流れる定電流値の見直しが必要になる。
カレントミラー定電流回路の良いところは、定電流に使うFETのIdssに制約があっても、カレントミラーの抵抗値比を変えることで定電流値の大きな調整ができることにあります。 (最も良いところは0.7V程度の低い電圧で動作することにありますが)

今回使用する定電流用FETは2SK208-Oで、そのIdssは約0.95mA程度です。これは最大流せる電流なので、調整余裕度を割引き、その8割程度の0.78mAが定電流値になります。この電流値で初段差動増幅回路の定電流値0.59mAx2倍=1.18mAを流すために、カレントミラーの抵抗比 150Ω/90Ωで増幅します。

LTSpiceでシミュレーション
HPA_kane_DC_New_Bat_11.jpg

J4 J2SK30_095とあるのが 2SK208-O の 0.95mA Idss 相当品です。カレントミラー Q8 Q7 R18 R1 の組み合わせで構成し、R17(実際は半固定抵抗)で定電流レベルを調整します。この回路ではR17を140Ωにすると終段増幅回路のアイドル電流が約11mAになります。
(注:最初に掲載した回路図はシミュレーション前のものです)

この回路定数で歪率計算すると、通常使用されると思える 10mW出力での歪率は 0.006144%、最大出力は 59mW (1%歪率、36Ωインピーダンス)になります。

今回も seeed.comのFusin に発注しました。今もディスカウントの4.9$(通常9.9$、100x100mm、10枚)ですので、送料を+500円奮発し、EMSからFedex 便にしました。


次の課題は最も苦手な、「ケースをデザイン・シールで飾る」ことです・・・
具体的な内容は
1.どんなデザインにするか、これが最も大変
2.黒いケースに透明シールで鮮やかな発色を得るためには、塗色部ベースに白塗りをする技法修得
3.複数レイヤーで描いた画像を、複数個所に位置合わせしたコピーをすること

これらは Photoshop 6.0 を使って描くのですが、何せ古いソフト故に全く同じ操作例がWEBに載ってません。
こちらのHPAでシールを作ったのですが、あれから2年ぶりで行うことなのですっかり忘れてます・・・

シールの例
HPA_opamp_11.jpg

ヘッドホンの小さな絵を描いているのですが、黒バックに青色画像だったのでかすかにしか見えない失敗作でした。
文字も、もっとデザイン調でカラフルなものが良いですよね。




金田式もどきDCヘッドホンアンプ・リニューアル(Li-ion電池の変更)

金田式もどきDCヘッドホンアンプは、その独特の音色を維持しながら、軽量コンパクトで充電式の意匠に仕上げたことでかなりの高評価を頂きました。(こちらを参照ください

【参考外観】
HPA_v6_2_Liion_4.jpg HPA_v6_2_Liion_5.jpg

しかし、いまいち不満が残る3点がありました。

1.アイドル電流の調整がピーキー過ぎ、調整を間違えると異常発熱を起こす場合があった。
2.リチウムイオン電池の容量が少なく、8~10時間程度しか持たない。
3.真っ黒な躯体でいかにも武骨、音楽機器に不相応。

そこで以下の改良を検討中です。

【1.アイドル電流回路=差動増幅定電流回路の変更】
金田式はFETと調整抵抗1個で初段差動増幅の定電流を調整し、終段アイドル電流を決めています。
この回路は調整がピーキーなことと温度依存性が高いので、カレントミラー回路に変更します。

HPA_kane_DC_New_Bat_6.jpg

左下がカレントミラー定電流回路です。安定する動作電圧が0.7V程度と低いことがその安定度の一因です。
トランジスタが2個、抵抗が2個(片チャンネル)増えることが難点です。

【2.リチウムイオン電池の変更】
これまで使用してきたリチウムイオン電池は、14500型式の丸型でした。
電池ケースが使えるので扱いが楽でしたが、丸型ゆえに実容量が低かったです(公称900mAh、実力600mAh程度)

そこで検討したのがこの角型リチウムイオン電池です。50 x 34 x 5mm
このサイズならば2個重ねて電池ケース部分に入れられます。

HPA_kane_DC_New_Bat_7.jpg

公称値は印字に見えるように850mAhなので、14500電池の公称900mAhよりは少ないです。
でも、これまで何度も計測してきましたが、測ってみなければ判らないというのがこの世界です。

【充放電回路】
この電池は保護回路無しなので、過放電保護回路、充電回路などを付加する必要があります。
放電により容量計測も行いたいので、充放電回路を作りました。

HPA_kane_DC_New_Bat_2.jpg
過放電保護ICと、XC6802という充電ICを組み合わせます。動作切り替えはスイッチです。
放電(Load)は負荷抵抗80Ωに流れますので、この差分電圧で電流を計測します。

【放電計測】
HPA_kane_DC_New_Bat_4.jpg

上側に見えるのがLi-ion電池と充放電回路です。今は放電状態を計測しています。
先に作ったArduino CAN Sheild を流用し、ソフト変更で電池電圧と放電電流を計測し、
その結果をLCD表示、BluetoothでPC表示、そしてSDへcsvファイル記録しています。

参考:Arduinoマイコンでの計測ソフトはこちらを参照ください。
    ここで掲載しているArduinoプログラムに対して変更している点は

  if (!SD.begin(4)) { //  これを
  if (!SD.begin(10)) {  //  SDのCSピンが4から10に変更した

    outputValue1 = map(sensorValue1, 0, 1023, 0, 508);
    outputValue2 = map(sensorValue2, 0, 1023, 0, 508);
    outputValue3 = map(sensorValue3, 0, 1023, 0, 508);
   
    Voltage0 = outputValue0 / 100.00 ;   // 電池電圧単位(V)に変換
    Voltage1 = outputValue1 / 100.00 ;
    Ampare0  = outputValue2 / 10.00 ;    // 電池電流単位(mA)に変換
    Ampare1  = outputValue3 / 10.00 ;

これを

    outputValue0 = map(sensorValue0, 0, 1023, 0, 510);  // 510 は電源電圧実測値の 5.10Vを示す
    outputValue1 = map(sensorValue1, 0, 1023, 0, 510);
    outputValue2 = map(sensorValue2, 0, 1023, 0, 510);
    outputValue3 = map(sensorValue3, 0, 1023, 0, 510);
  
    Voltage0 = outputValue0 / 100.00 ;     // 電池電圧単位(V)に変換
    Voltage1 = outputValue1 / 100.00 ;
    Ampare0  = outputValue2 / 8.00 ;       // 電池電流単位(mA)に変換
    Ampare1  = outputValue3 / 8.00 ;       // 電流計測抵抗が80Ωなので8で除算

このように変えると動きます。

【放電による容量計測結果】
HPA_kane_DC_New_Bat_3.jpg

csvファイルで得た結果を、バッテリー電圧、放電電流、これを積算した電力で表示してます。
初期の設定電流はステレオ動作を考慮した50mAです(アイドル電流(15+5)mA x 2 + α)

この結果から、約19時間程度の電池ライフが期待できます。
電池の積算電力は公称値850mAhを超え、900mAh程度になってます。これは素晴らしいです。

【充電風景】
HPA_kane_DC_New_Bat_5.jpg

充電は600mA程度に設定しましたが、900mA程度流れ、2時間程度で完了します。少し電流を下げたほうが良いようです。
充電ICはこれまでと同じXC6802をを使っていますが、低電流でも点灯する最近の高輝度LEDよりも、従来型LEDの方が充電完了時に消灯してくれるようです。チップLEDの従来型特性品を選びましょう。

【充電特性】 2017/08/07 追記

HPA_kane_DC_New_Bat_12.jpg

Li-ion電池と保護回路の間に 20mΩの電流計測用抵抗を挿入し、その電圧差をオペアンプの差動電圧計測で100倍にし、Arduinoマイコンで計測しています。差動電圧のマイコン回路は以下の通りです。

HPA_kane_DC_New_Bat_13.jpg

上位電圧をV2に、下位電圧をV1に接続します。V₀=(V2-V1)x(R2-R1)なので、R1を10kΩ、R2を1MΩにすれば、電圧差を100倍ゲインで取得できます。

20mΩの電位差は充電初期には16mv程度でした。これを電流に換算すると800mA程度になります。充電に使っているIC、XC6802は付加抵抗値で充電電流を調整する機構を備えています。理論的には500mAになるはずですが、仕様規格最大の800mA流れています。

20mΩの初期電位差16mVはオペアンプで100倍増幅すると1.6Vになります。これを放電計測で示したArduinoマイコンで計測し、電位差を電流に直して表示したのが上のグラフです。初期800mAだったものが、0.8hr程度から下降し1.8hrで微小な充電電流であるトリクル充電に移行します。

しかし、データシートに掲載されているこのグラフに比較すると何か変です。

HPA_kane_DC_New_Bat_14.jpg
このグラフでは1.4hr程度で充電が終了するのに、私が計測したグラフでは1.8hrかかっています。もしかすると、充電電流の計測800mAは間違いで実際の真値は500mAなのかもしれません。
参考までに、このデータシートの電力を積算すると0.76mAhになります。私の計測した結果の電力積算は1.09mAhなので過大です。
これを800mAではなく500mAと仮定して電力積算すると0.68mAhになります。やはり電流計測値が過大のようです。

1つの電池が500mA充電ならば2個で1000mA、これならば一般の充電器でも間に合う電流容量と思います。


さて、金田式もどきDCヘッドホンアンプ・リニューアルの目途が立ちました。
角型Li-ion電池の収納を考え、基板設計もリニューアルしたいと思います。

・・・筐体の武骨解消は綺麗なシールを考えましょう。最も苦手な分野ですが・・・






金田式もどき(改)バランス型ヘッドホンアンプ

・・・久々の記事です。

バランス型Lineアンプに使いたいということで、ヘッドホンアンプを昨年末に作りました。

金田式のヘッドホンアンプやパワーアンプの回路構成は、「対称型」と言うらしいが、この【対称】であるかどうかという諸説が色々あって私には良く判りません。
この回路はNPN-PNP素子組み合わせではなく、NPN-NPNやPNP-PNPの同じトランジスタを組み合わせることができるので、増幅度hFEの選別合わせが容易なので愛用しています。

この金田式の2番目以降の増幅回路をパラに組み合わせて、バランス型アンプを多々作っていますが、一番の難点は私の歪率計測器ではバランス型アンプの計測ができません。よって歪率を計測するのに、オペアンプで組んだバランスtoアンバランス変換回路を使っていたのですが、計測するアンプの出力電圧が上がってくると、この回路も使えない状況です。

バランス型のアンプは私の歪率計測道具では計測ができないという結論になったので、回路シミュレーションが頼りです。

今回のヘッドホンアンプも15VDC電圧(5Vのモバイルバッテリーを3個使う)をレールスプリッタ分圧で±7.5Vで使っているが、低出力域では何とか計測できるが、パワーを上げると計測アンプの波形が変形し歪率が急増してしまいます。バランス型アンプの出力は電圧が2倍出るのでそれがネックです。

【LTSpiceでシミュレーション】
HPA_kane_DC_BAL_4_7_2.jpg

この図では小さくて識別できませんが(拡大して見てください)、電圧や電流を確認するときに使う SPICE directive が左下で、中央下が歪率とパワーを計算するものです。

この回路ではオリジナルの金田式に比較して大きく変更したところが、バランス型改造以外に2か所あります。

1.初段J-FETの差動増幅の定電流が、FET+抵抗1本から、カレントミラーと半固定抵抗になり安定した調整と温度特性になりました。
2.上図の赤楕円部分にあった負荷抵抗1.2kを外し、2段目差動増幅からドライバー段増幅への接続が、「インバーテッド・ダーリントン接続の変形」になってます。これに変更することで大幅な歪率低下と安定した動作になりました。

金田式ヘッドフォン回路では以前から歪率が安定しないケースが散発していました。こちらの記事です。
http://higa284.blog20.fc2.com/blog-entry-272.html
その歪率グラフはこちらです。
金田式オリジナルのTrである、2SC959を使った時に、途中から歪率が持ち上がる現象が出ました。
今また、金田さんのヘッドホンアンプ製作記事を見直してみると、歪率が0.3%程度もあります。この負荷抵抗が問題だったように思われます。

このことは、同じ回路構成をしているパワーアンプでも同様のようです。

【計算結果】

HPA_kane_DC_BAL_4_8.jpg

1V入力の時、2.74Vrms=208mW(日本製ヘッドフォンの代表的インピーダンス36Ωで)出力、0.0146%の歪率です。

【基板】
HPA_kane_DC_BAL_4.jpg

両側に左右2chが並んでいます。中央はオペアンプで電圧中点をしっかり合わせる機能を有するレールスプリッタ電源です。動作テストに使った負荷抵抗が向こう側に見えています。この抵抗値をわざとアンバランスにして電圧中点がずれないかをチェックします。

【アンプケースに配置】
HPA_kane_DC_BAL_4_4.jpg

今回使ったケースはタカチ・HIT23518SS、両側に放熱フィンが付いています(今回は使いません)。パワーアンプの終段トランジスタを付けるにはGoodです。
バランス入力型なので4連ボリュームです。ぺるけさんから頒布いただきました。いつもありがとうございます。
入力はXLR3P端子2個から左右別々です。出力端子はXLR5Pが2個並列についていますので、2台のヘッドフォンが付けられます。
白くやや太めの配線は、立井マイクケーブルの芯線です。オーディオ信号ケーブルとして特性が良いと言われています。


【外観】
HPA_kane_DC_BAL_4_5.jpg  

アンプ上面に文字シールを作って印刷する前のサンプル紙が載っています。本番は透明シールになります。
左に見える箱は、5Vモバイルバッテリー3個を接続し、15VDCにするためのものです。

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電気オンチが始めた自作オーディオです
2010/3/17 電子工作をプラスしました。

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